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I-1 動作環境の整備

ここではsimBioを使用する準備をします。simBioでは、 Javaを用いて数式を記述し、 XMLを用いてモデル構造を記述しています。 simBioを使って心筋細胞モデルのシミュレーションをするにはJava利用環境を、 独自の心筋細胞モデルを開発するにはJava開発環境を整える必要があります。

Java
Sun Microsystems社が開発したプログラミング言語。 「@IT」に掲載されている 「Eclipseではじめるプログラミング」 等のインターネット上の情報のほか、 『プログラミング言語Java』 『Javaチュートリアル』 『Head First Java―頭とからだで覚えるJavaの基本』 などの書籍でも解説されています。 しかし、simBioを使ってのシミュレーション、 独自モデルの作成に必要なJavaの知識は限られていますので、 本書では必要に応じてJavaを使ったプログラミングについて解説します。
XML
文書やデータの意味や構造を記述するためのマークアップ言語の1つで、 タグとよばれる特定の文字列を用いて、構造情報をテキストに埋め込みます。 プログラム上から操作しやすく、かつテキストエディタなどで人間が直接操作できる特徴があります。 詳細については、II-2で解説します。
注釈
専門用語については適宜解説を加えていますが、抜けている箇所がありましたら著者までご連絡ください。 google.co.jp等の検索サイトで用語を検索すると、解説が得られる場合もあります。

ハードウェアの準備

Java 1.4.2以上が動くPCを用意します。 simBioの開発に用いたPCはWindows XP、Pentium 4 2.4 GHz、RAM 512 MBです。 simBioの動作が確認できている環境は以下のとおりです。

  • CPU Celeron 400 MHz以上
  • OS Windows 98, 2000, Me, XP、Mac OS X、Red Hat Linux 8.0, 9.0、Fedora Core 4、 Vine Linux 2.6
  • メモリ 196MB以上

ソフトウェアのインストール

表記について
コマンドやボタンの表示については、[]で囲んで表記、 入力する文字については、フォントをcommandで表記、 出力された文字については適宜""で囲んで表記します。

Java

まず、Javaが利用可能か確認します。 Windowsの場合、[スタート]ボタン→[すべてのプログラム]→[アクセサリ]と辿り、[コマンド プロンプト]を実行します。 開いたウィンドウにjava –versionと打ち込んでEnterキーを押し、 "java version 1.4.2"等と表示されれば、Javaが利用可能です (javaはJavaプログラムを実行するコマンド、–versionは利用可能なJavaのバージョンを表示する命令です。 その間はスペースで区切ります)。 "javaは、コマンドとして認識されていません"等と表示されるときは、 「Javaソフトウェアの無料ダウンロード」 からJavaをインストールしてください。 [自動ダウンロード]を選択すると、現時点ではJ2SE Runtime Environment 5.0 Update 6がインストールされますが、 プログラム作成には、JDK(Java Development Kit)をインストールする必要がありますので、 "JDK 5.0 Update 6" を選択し、インストールしてください。

バージョン1.4.2以上のJavaを使用
Javaは必ずバージョン1.4.2以上のものをインストールしてください。 1.3以前のバージョンはXML関係のパッケージが標準サポートされていないので、用いることができません。 1.4.1以前のバージョンでは次にインストールするEclipse 3.1.2が動きません。
他のJDK
simBioの開発にはIBM JDK 1.4.2を用いています。 IBMのサイトから、 Eclipseとセットで入手できます。 他にもBEA JROCKITなどのJDKがあります。
ドキュメント
必須ではありませんが、日本語版ドキュメント JDK 5.0 もしくは Java 2 SDK V1.4.0 もダウンロードして、手元においたほうが便利です。

Eclipse

Java 開発環境にはいろいろなものがありますが、 ここでは Eclipseを使用します。

「Eclipse.org」 の[Downloads]をクリックし、最新の安定版eclipse SDK 3.1.2をダウンロードし、適当な場所に展開してください。 ここではc:\に展開することにします。 Windows XPの場合、zipファイルを右クリック、[すべて展開]を選択し、ファイル展開先フォルダにc:\を選択すれば、 "c:\eclipse"フォルダが作成されます。

Eclipse (eclipse)
プログラムの作成に必要な作業(編集やコンパイル、デバッグ)を統一的に行える統合開発環境(IDE)の1つです。 Eclipseに関しては、「@IT」に掲載されている 「Eclipseを使おう!」 等が参考になります。 Eclipseについてより深く知るには、Eclipse開発元であるIBMのサイトに掲載されている 「Eclipse Platform入門」 などを参照してください。 様々な解説書も出版されています。
Windows付属の“展開ウィザード”を使用する
“eclipse SDK 3.1.2”を展開する時は必ず、zipファイルを右クリックし、 [すべて展開]を選択してWindows付属の“展開ウィザード”を使用してください。 それ以外の解凍ソフトを使用すると、Eclipseの日本語化に失敗する場合があります。

Eclipseの日本語化パック

「Eclipse Language Pack」 からeclipse SDKのバージョンに合った日本語パック(eclipse SDK 3.1.xに対してはNLpack1-eclipse-SDK-3.1.1a-win32とNLpack1_Feature Overlay-eclipse-SDK-3.1.1) をダウンロードし、eclipseフォルダ内のファイルが上書きされるように、 c:\に展開してください。Windows XPの場合、zipファイルを右クリック、 [すべて展開]を選択し、ファイル展開先フォルダにc:\を選択します。 上書きの可否を確認するダイアログが出てきたら、[すべてはい]を選択してください。

XMLエディタ

simBioに含まれるXMLファイルを編集するには、適当なエディタがあると便利です。 「XMLBuddy」 からEclipseのバージョンに合ったファイル ("eclipse SDK 3.1.2"に対して、現時点では"xmlbuddy_2.0.72.zip")をダウンロードして、 Eclipseのプラグイン・フォルダ(c:\eclipse\plugins)に展開してください。 Windows XPの場合、zipファイルを右クリック、[すべて展開]を選択します。 ファイル展開先にEclipseのプラグイン・フォルダを選択すれば、com.objfac.xmleditor_ 2.0.72フォルダが作成され、 XMLファイルを編集する環境が整います。

XMLファイルのエディタ
プラグインとは
Eclipseに機能を追加するソフト。 Eclipseはプラグインを使って基本部分に様々な機能を追加し、多彩な機能を提供しています。
代替案
他にも様々なXMLエディタがあります。 Eclipse Web Tools Platform (WTP)プロジェクトも高機能なXMLエディタを含んでいます。 WTPを利用するにはJava2SE5以降が必要です。

Eclipseの初期設定

eclipseフォルダ内にあるeclipse.exe(c:\eclipse\eclipse.exe)を起動すると、 ワークスペース・ランチャーダイアログがこれから作成するプログラムを保存するフォルダを訊ねてきます。

図1-1-1 ワークスペース・ランチャーダイアログ

既定値のまま[OK]を押すとEclipseが起動し、"Eclipse 3.1へようこそ"という画面が現れます。 まず[ウィンドウ]→[設定]メニューを選択し、初期設定をします。

図1-1-2 Eclipse 3.1へようこそ

文字コードをUTF-8にする

simBioの文字コードはUTF-8なので、 [一般]→エディターダイアログで[テキスト・ファイル・エンコード]をUTF-8にします。

図1-1-3 エディター設定ダイアログ
エンコードとは
文字はコンピュータの中ではある数値で表現されています。 文字に数値を割り当てる方法をエンコードといい、 UTF-8やShift-JIS, EUC-JPなど様々な形式があります。 JavaではUTF-8を標準的に用いており、 Windows XPではShift-JISに似たMS932形式が用いられています。

ソースと出力フォルダーの分離

[Java]→ビルド・パスダイアログの[ソースおよび出力フォルダー]で[フォルダー]を選択します。 [ソース・フォルダー名]にsrc/main/java、[出力フォルダー名]にtarget/classesと入力します。

図1-1-4 ソースおよび出力フォルダー設定ダイアログ
フォルダ構造
simBioでは、オープンソースでよく使われるプロジェクト管理ツール Mavenに習ったフォルダ構造を採用しています。

ユーザーライブラリにTOOLSを設定

[Java]→[ビルド・パス]→ユーザー・ライブラリーダイアログで[新規(N)...]を選択し、[ユーザー・ライブラリー名]にTOOLSと入力します。

図1-1 新規ユーザーライブラリー名設定ダイアログ

[JARの追加(J)...]を選択し、インストールしたJDKのlibフォルダーの中にあるtools.jarを選択し、開きます。

図1-1 JAR選択ダイアログ

設定を確認し、[OK]します。

図1-1 ユーザーライブラリー設定ダイアログ
tools.jar
このtools.jarは一つのソースファイルから英語と日本語のJavadocを別々に生成する為にsimBio 1.0以降で利用します。

XMLの表示色

初期設定のXMLBuddyは、タグと属性名を同じ色で表示します。 見やすくするために色を変更しておきましょう。[XMLBuddy]→[XML]→[Colors]→[Attribute name]を選択し、 好きな色を選択してください。

図1-1-5 Colors設定ダイアログ
設定内容の保存
現在の設定内容はEclipseの[ファイル]→[エクスポート]メニューからファイルに書き出せます。